SCROLL

わち刈りと灰小屋

2021.03.26
黒大豆の歴史
Text by 丹波篠山市農業遺産推進協議会

丹波篠山では、里山のあちらこちらに「灰小屋(はいごや、はんや)」と呼ばれる奥行1間(180cm)程度の内壁を土や漆喰で固めた小屋を見つけることができます。

 

「灰小屋」の中で、枯れ木や落葉、藁、枯草などを焼き、それを灰肥料として利用します。灰肥料に含まれるカルシウム成分によって、大豆の茎疫病の発生が20%以上抑制される、収量が10~20%上昇する、といった効果が報告されています。この灰肥料は、江戸時代には家畜の残滓とともに貴重な肥料でした。丹波篠山には、今でも90か所以上の「灰小屋」が残されています。

 

「灰小屋」で燃やされる枯れ木や落葉、枯草は、藩直轄の山林からの払い下げのほか、「わち刈り」でも入手していました。「わち」とは農地と里山との境界部分のことで、隣接する農地の所有者が草木や落葉を採取できる「わち刈り」の権利を持っていました。木草を使用しなくなった今日でも「わち」は管理され、「灰小屋」とともに里山の景観を形成しています。