Text by 丹波篠山市農業遺産推進協議会
江戸時代の料理本「料理網目調味抄」(享保15年(1730))では、煮しめた黒大豆を「座禅豆」と呼んでいます。「座禅豆 かたく煮るは豆を布巾でふきて生醤にて炭火にて煮る くろ豆は丹州笹山名物なり」と書かれていることから、砂糖を使わず醤油で煮た、硬めで塩辛い煮豆だったと考えられます。
ところが「黒白精味集」(延享3年(1746))には「堅き和らかは好次第、又砂糖を入る方あり」と記されおり、好みによって、やわらかめの座禅豆や甘味を加えたものもあったようです。
文政13年(1830)発行の「嬉遊笑覧」では、江戸時代後期の文政年間(1818~1831)には座禅豆が正月料理の定番になっていたことや、かつては酒の肴として盛んに食べられていたことが書かれています。
「食道楽」(大正9年(1920))には、今日のような甘い煮豆のレシピが記載され、日本一の黒大豆は丹波篠山産のもので、「産額は極く僅少ですけれども、味の佳いことは殆ど無類です」と、その希少性と品質の良さが紹介されています。
「料理網目調味抄」(享保15年(1730)) 国立国会図書館所蔵
「座禅豆」のレシピ。その右側は煮しめのレシピが記述されています。